間違った「おもてなし」(後編)

気持ちよりもシステム

前回の続きです。


私たちはつい相手が「お客様」であることを忘れ、「自分がいいと思うこと」を押し付けがちです。だから「相手が喜ぶこと・もの」よりも「自分が自慢したいこと・もの」を強調してしまいます。


典型的な例は日本の「おもてなし」という概念です。


日本はおもてなしが素晴らしい・・・といいますが、本当でしょうか?


普通に考えて「お客様を大切にもてなす」という概念は、世界共通です。

別に日本だけの特性ではありません。


「いやいや、特に日本は気遣いや心配りが・・・」


と思うかもしれません。でも、本当に他国と比べてもそうでしょうか。


先日、私は広島の路面電車に乗っていました。すると、中国人のカップルが乗っていて、降りる際にいくら払えばよいかわからず困っていました。彼らは日本語も英語も話せませんし、乗車駅によって料金が変わるので、乗務員さんも困っていました。(このときはたまたま私の知人の中国人が同乗していたので、通訳してあげていました)


このとき助けてあげることが「おもてなし」でしょうか?私はそうは思いません。真のおもてなしとは、この中国人カップルが「誰にも聞かずにカンタンに料金がわかる」ことではないでしょうか。もしあなたが知らない国の路面電車に乗るとき、欲しいのは「親切な人」ではなく「カンタンでわかりやすい乗車システム、もしくはその説明」ですよね。


この中国人カップルにとって必要な「おもてなし」は「人の気遣いや心配り」ではなく、「システム」です。そこを忘れて、定義もあいまいな「おもてなし」という言葉に逃げてしまうのは、相手の気持ちを無視したことになりかねません。


それに「おもてなし」で観光客が増えると思いますか?あなたがまったく興味がない国から「私たちはおもてなしが素晴らしいです、ぜひ来てください」と言われて行きたいでしょうか?」そんなことはないはずです。観光したい、おいしいものを食べたい、きれいな景色を見たい、という欲求があって旅行をするので、おもてなしが「選ぶ要因」にはならないはずです。


このように私たちはつい相手の気持ちを無視して「自分がよいと思うもの」を押し付けてしまいがちです。もちろん「思い」そのものは大事です。しかしそれが「押し付け」になってはいけません。売れない、というときは自分の思いや意気込みを一旦わきに置いて、真の意味での顧客視点を持つことが必要です。