正しく因果関係を見抜くには(前編)

よく歩く人は糖尿病にならない?

今回は、私がよく研修で行う「ロジカルシンキング」から一例をご紹介します。

 

私が病院に行くと、待合室でこのようなポスターを見かけました。

 

「通勤で30分以上歩く人と30分未満の人を比べると、歩く人の方が糖尿病になる確率が●●%低いことがわかりました。歩くことは糖尿病予防に効果的です。だからみなさん歩きましょう」

 

※実際には歩く時間や確率など細かい値は失念しましたのでおおよそとして捉えてください。

 

さて、あなたはこのポスターの表記を見てどう思ったでしょうか?

「ふむふむ、やっぱり歩くことは糖尿病予防にいいんだな、もっと歩くようにしよう」

と思ったでしょうか?

 

ビジネス上において「因果関係」を考えることはとても大切です。

 

「Aという要因で、Bになった」つまり「A→B」という関係が成り立てば、それは因果関係です。

 

ところが、実際には「A→B」のように見えて「A←B」「A⇔B」、さらには「AとBには何の関係もない」場合があります。

 

AとBが互いに何らかの影響を及ぼしているのならそれは「相関関係」です。ところがそれが「A→B」という「因果関係」になっているとは限らないのです。

 

堅い話になったので、ポスターの例に戻ります。

 

では、この統計データから、「よく歩く→糖尿病になりにくい」という因果関係は明確に成り立つでしょうか?

 

実はこれはニセモノの相関=偽相関である可能性があります。

 

以下はあくまでも仮説ですが…

 

通勤で「よく歩く人」と「あまり歩かない人」を比較してみましょう。

 

よく歩く人=大都市のホワイトカラー

あまり歩かない人=地方在住、職業まちまち(地方は家から職場まで車通勤できることが多い)

 

このような人が調査対象者に割合として多い、という可能性があります。

 

そして、大都市のホワイトカラーの人は・・・

 

比較的給与が高い=食事や運動など、健康にお金を使う余裕がある=総合的に健康な暮らしをする=糖尿病になりにくい

会社が大企業である可能性が高い=健康診断などの福利厚生がしっかりしている=病気になる前に体調の悪化を指摘される=糖尿病になりにくい

 

ことが考えられます。

 

つまり、仮説ではありますが、

 

「よく歩くから、糖尿病にならない」

 

のではなく、

 

「よく歩く人は、比率的に大都市のホワイトカラーが多い。

そのような人は健康に使うお金にゆとりがあったり会社の健康診断をこまめに受けられたりする。

だから、糖尿病にならない」

 

のかもしれません。

 

そのため、もしかしたら歩いてもそれは糖尿病予防にはならないかもしれない・・・のです。

 

そもそも、このデータを見て「よし、もっと歩こう」という人は健康意識が高いので、歩くかどうかに関係なく糖尿病になりにくそうですよね。だから因果関係を正確に見ぬくのは難しいのです。

 

よくある例がタバコです。

 

タバコは健康に悪いと言いますが、それが本当かを証明するには

「タバコをよく吸う人は吸わない人よりもストレスが多いのではないか、だからタバコではなくストレスが健康に悪いのではないか」

といった要素を排除しなければならないのです。

 

では最後に問題です。

 

「小学校で、『朝食を食べるグループ』と『朝食を食べないグループ』を比較したところ、明らかに朝食を食べるグループの方が食べないグループよりも学校の成績が良かった。そのため、朝食を食べることは成績アップに効果的であることがわかった」

 

さて、どうでしょうか。これは相関関係でしょうか、偽相関でしょうか。

 

続きはまた次回に。

 

※糖尿病の例は、病院にポスターとして掲示してあるくらいですから、きちんと統計的に有意、つまり私が挙げた仮説などを排除した正確な統計結果かもしれません。あくまでも思考の一例としてとらえてください。